「AI顧問」という言葉を、よく見かけるようになりました。月額いくらでAIの相談に乗ります、という契約です。私も同じものを売る側です。
ただ、この分野には共通の物差しがありません。中小機構の調査では、「適切なベンダーや製品を選定する情報が十分にある」に当てはまらない企業が79.8%でした。金額でも決まりません。サイトに金額を書いている会社は、月2万円のところから月75万円からというところまで開きがあります。しかも同じ「月1回の打ち合わせとチャット相談」で月30万円という会社もあり、金額を並べても中身は比べられません。
そこで、そのまま声に出して聞ける質問を5つ用意しました。私にではなく、他社さんにこそ聞いてみてください。最後に、私自身の答えも書きます。
1つめ「これまでに作ったものの実物を、見せてもらえますか」
実績は、社名を並べるだけならいくらでも作れます。見たいのは社名ではなく、動いているものの中身です。画面、操作マニュアル、実際に出てくるレポート。どれも見せられない会社は、作った経験が薄いか、人に説明できる形で残していないかです。
- 良い答えの例:会社名は伏せたまま画面を開いて見せる。何ができて、何ができなかったかを両方話す。効果の見積もりを出しているなら、計算式まで見せる。
- 危ない答えの例:導入企業のロゴが並んだ資料だけを出す。件数や割合は言うのに、何をどの期間数えたのかを言わない。
守秘義務があっても、社名を伏せたまま中身を話すことはできます。
2つめ「月額のほかにかかるお金の一覧を、見せてもらえますか」
月額だけを見て契約すると、あとから別の請求が出てきます。よくあるのは、最初の設計費、作るときの費用、AIそのものの利用料、他社のサービスの月額です。月額に入っているのか別なのかが曖昧なまま始めると、社内で説明できなくなります。
- 良い答えの例:月額に入るもの、別にかかるもの、金額が変わる条件を、紙で出す。分からない部分は幅で答える。
- 危ない答えの例:「だいたい月額の中でやれます」で済ませる。金額が変わる条件を口頭でしか言わない。
3つめ「解約の条件が契約書のどこに書いてあるか、見せてもらえますか」
合うか合わないかは、始めてみないと分かりません。だから「やめ方」が先に分かっていることが大事です。最低契約期間は何ヶ月か。違約金はあるか。いつまでに言えばやめられるか。条文を指しながら答えられるかを見ます。
- 良い答えの例:契約書のその行を開いて指す。最低期間があるなら、なぜ必要かを説明する。
- 危ない答えの例:「そんなにすぐやめる方はいませんよ」と話をそらす。契約書を直前まで見せない。自動更新の条件を、聞かれるまで言わない。
最低期間があること自体は悪くありません。問題は、それが聞く前に隠されていることです。
4つめ「最後に人が決める場所はどこか、仕事の流れの図を見せてもらえますか」
事故が大きくなるのは、AIが社外へ何かを出せるようになっているときです。メールの送信、請求書の発行、発注、支払い。ここをAIに握らせている作りだと、間違いがそのまま社外へ出ます。図の中で「人が止まる場所」を聞いてください。
- 良い答えの例:1枚の図で、AIが下書きを作るところまでと、人が押すボタンを分けて示す。「送信は人です」と言い切る。
- 危ない答えの例:「丸投げでOKです」「完全自動化できます」と言う。AIが作ったものを別のAIが検品します、という説明だけで終わる。
AIが作ったものをAIが確認する仕組みは有効です。ただ、それだけだと人が誰も見ていない状態になります。最後に人が決める場所が図にあるかを、確認してください。
5つめ「引き継ぐときにいただける資料を、見せてもらえますか」
契約が終わったあと、作ったものが動かなくなる場合があります。設定がその会社の中にしかない、アカウントがその会社の名義になっている、直せるのがその会社の担当者だけ。こうなると、やめたくてもやめられません。
- 良い答えの例:アカウントは御社の名義で作ります、と最初に言う。設定を書いた資料とマニュアルを渡す。「解約後もここまでは動きます、ここは止まります」を先に説明する。
- 危ない答えの例:「弊社の仕組みですので中身はお見せできません」。マニュアルはなく口頭の説明だけ。その担当者しか触れない。
「丸投げでOK」と言う会社には気をつけてください
私が同業の案内を見ていて、これが出てきたら一度止まったほうがいい、と思う言い回しがあります。
| 言われたこと | どう読むか |
|---|---|
| 丸投げでOKです | 社内の誰も中身を知らない状態になります |
| 完全自動化できます | 人が止まる場所がない、という意味です |
| 必ず成果が出ます | 出なかったときの話をしていません |
| 残り枠があと◯社です | 考える時間を削りにきています |
契約書を出さない、見積書の内訳を書かない、担当者の氏名と連絡先を教えない。どれか1つでもあれば、金額に関係なく止めてください。
私自身は、この5つにこう答えます
聞くだけ聞いて、自分は答えないのでは意味がありません。
1つめ、実物について。お客様に納めたのは3件です。飲食店を複数展開している企業のInstagram運用の自動化、経営コンサルティング会社の経営ダッシュボード、議事録の自動化。会社名は出しません。件数は多くありません。そのぶん、自分の仕事で起きたことは数字ごと出します。請求漏れ64,000円を検知して、その日のうちに発行しました。1件あたり44,000円の過大計上を、請求書が出る前に直しました。お金の数字が狂う原因を4つ塞ぎ、金額が合っているかを機械が毎回確かめる点検を組み込みました。
2つめ、お金について。月額のAI顧問は月10万円からです。10万円はいちばん小さい形で、何をどこまでお任せいただくかによって変わります。いまの仕事を一度並べて見せていただく作業と、そこから業務を1つ選んで作る作業は、月額とは別の料金です。ほかにかかるものがあれば、契約の前に一覧でお出しします。
3つめ、解約について。最低3ヶ月で、4ヶ月目からは月単位でやめられます。違約金はありません。3ヶ月の縛りがある理由は、毎日・毎週・毎月の型が回り出すまでに時間がかかるからです。もっと短い区切りが良い方は、それを条件に探してください。
4つめ、人が決める場所について。AIは下書きと検知までです。送信と発行は人がします。自分の仕事では、請求は確認して発行ボタンを押すだけになりました。返信漏れは、10日気づかなかったものが、いまは30分以内に上がってきます。ただし上がるだけで、返信は人がします。
5つめ、引き継ぎについて。操作マニュアルをお渡しし、担当の方にレクチャーします。弱いところも書きます。私は個人事業です。私が動けなくなったときに代われる人はいません。そこが不安であれば、人数のいる会社を選ぶのが正しいです。
まとめ
5つを並べます。
- これまでに作ったものの実物を、見せてもらえますか
- 月額のほかにかかるお金の一覧を、見せてもらえますか
- 解約の条件が契約書のどこに書いてあるか、見せてもらえますか
- 最後に人が決める場所はどこか、仕事の流れの図を見せてもらえますか
- 引き継ぐときにいただける資料を、見せてもらえますか
この5つに全部答えられる会社は、私のほかにもあるはずです。そのときは、そちらを選んでください。聞いてみて、答えが濁ったら、それが答えです。

